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『ナイロビの蜂』特集

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レイチェル・ワイズ 本年度アカデミー賞助演女優賞受賞『ナイロビの蜂』 5月13日より丸の内プラゼール他にて公開
『ナイロビの蜂』のココが観どころ! 『ナイロビの蜂』アフリカの現状 レイチェル・ワイズ徹底解剖
『ナイロビの蜂』――アフリカの現状
『ナイロビの蜂』が描いているアフリカ
第78回アカデミー賞で、『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズが助演女優賞を獲得した。レイチェル・ワイズが演じたのは、アフリカで救援活動に取り組む情熱的な女性、テッサ。正義のためなら危険も顧みず行動するテッサは、物語の冒頭で何者かに殺されてしまう。先進国の製薬会社がアフリカで行っている治験の闇に迫っていたからだ。
映画『ナイロビの蜂』の中で描かれている新薬の治験は、現実世界でも問題となっている。アフリカでの治験は規制が緩く、コストも安く済むため、世界の大手製薬会社がアフリカで新薬の治験を行うようになっているのだ。アフリカは製薬会社にとって、実に魅力的な地域といえる。感染症をはじめとして病人の割合が高く、症状の出方もはっきりしている上に、保険医療制度が整っていないため困り果てている患者には治験を実施しやすい。文字の読み書きをできる人が少ないため、治験に対する説明は充分に行われておらず、被験者の中にはワクチン接種に登録したのだと思っている者もいるほどだ。
こうした臨床試験がアフリカの医療問題を解決する一助になるのであれば、まだ納得できる話だが、実際にはそうではない。例えば、アフリカでエイズの予防薬の治験が行われ、それが有効であると結論づけられ商品化されたとしても、非常に高価なその薬をアフリカの人々が手に入れることは不可能に近いのだ。
サブ・サハラ・アフリカ地域を取り巻く問題
新薬治験のような非道がまかり通っているのも、アフリカの貧困と深い関係がある。アフリカ諸国のうち、サハラ砂漠以南の地域をサブ・サハラ・アフリカと呼ぶが、この地域を取り巻く問題は数多い。
全世界で49か国の後発開発途上国(開発途上国の中でも特に開発の遅れた国々)のうち、サブ・サハラ・アフリカに33か国が集中しているという現実。同じように、重債務貧困国(世界で最も重い債務を負っている途上国)と認定されている国は全世界に42か国あるが、そのうち33か国がサブ・サハラ・アフリカにある。さらに、1日1ドル以下での生活を余儀なくされている絶対貧困層の割合は49%である。世界地図を広げてみて欲しい。広大なアフリカ大陸の約半数の人々が、1日1ドル以下で暮らさざるを得ない状況にあるということだ。

HIV / エイズ問題も深刻だ。エイズのまん延は人の生命を脅かすだけでなく、労働力の減少や孤児の増加といった悪影響を社会・経済全般に及ぼす。全世界のHIV / エイズ感染者は4200万人に上るが、そのうち2940万人がサブ・サハラ・アフリカの人々である。これは、全感染者数の約70%にも相当する。特に、ジンバブエやボツワナといった国では、感染率30%以上(15~49歳の人口に占めるHIV / エイズ感染者の割合)という数値が出ているのだ。また、エイズは恥ずかしいことだという意識が根強く残っており、エイズで親を亡くした孤児は差別を受けて親戚を転々とし、ストリート・チルドレンになっていくという。
アフリカの現状を表す悲しい数字
全世界の人口の約13%を占めるアフリカで、こんなデータが出ている。全世界の子供の死亡の43%を、妊産婦死亡の50%を、エイズで親を亡くした子供の90%をアフリカが占めているというのである。
先日、世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健報告2006」の中に、世界各国の平均寿命のデータがある(WHO加盟国192カ国)。第1位は日本、モナコ、サンマリノの82歳だが、最下位のジンバブエでは36歳。付け加えるならば、ワースト10の国はすべてアフリカ大陸の国々だ。平均寿命の短さの原因には、乳幼児死亡率の高さが挙げられる。
 
アフリカは本来、美しい自然と豊かな資源に恵まれた大陸だが、民族・宗教対立、貧困、経済的利権などの複雑な要因を背景として、いくつもの武力紛争が発生している。それに伴う大量の難民、国内避難民の発生、経済の停滞や環境の破壊を招いている。ドン・チードル主演の映画『ホテル・ルワンダ』でも描かれていたツチ族とフツ族の対立もそのひとつ。
 
難民・避難民はアフリカ全体で約417万人といわれており、全世界の21%にもなる。
これがアフリカの現状 『ホテル・ルワンダ』より
アフリカへの関心

アフリカが抱える問題は一朝一夕に解決できるものではない。だが、今、アフリカも変わろうとしている。2001年、アフリカ諸国は、国際社会の援助に依存するのではなく、自らの責任において貧困撲滅、持続可能な成長と開発および世界経済への統合を目指し、「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」を開始した。NEPADは、アフリカ諸国が史上初めて、自らの手で策定した開発戦略だ。日本もNEPADを積極的に支援している。
 
映画『ナイロビの蜂』で、困っている人は大勢いて全員を救うことはできないのだと言う夫・ジャスティンに対し、テッサは叫ぶ。「いま、あの3人を救えるのよ!」と。アフリカという遠い土地の出来事に感じるかもしれないが、日本でも数多くの援助活動が国や民間レベルで行われている。参加しようと思えば、入り口はどこにでもあるものだ。まずは、知ること。そして、行動すること。外から眺めているのではなく、内面まで理解しようと努めることの大切さを実感して欲しい。
 
そう、『ナイロビの蜂』で、亡くなったテッサを理解しようとアフリカの大地を巡ったジャスティンのように…。
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