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織田裕二 特集

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 今 祥枝

■名前で観客を動員できる日本で唯一の俳優

配給:東宝

昨年の夏休み映画のヒット状況は、トム・クルーズ主演の『M:I-2』が一人勝ちだろうと予測していた。ところが、それはとんでもない誤りだった。クルーズに互角に渡り合える日本人の映画俳優がいたのである。織田裕二だ。彼が主演したアクション大作『ホワイトアウト』は、結果 として2000年の興行成績ランキングでも第4位の好成績を収める大ヒットとなった。

ある冬の日、日本最大のダムがテロリスト・グループに占拠される。ダム職員を人質にとった犯人グループが政府に要求したのは、50億円という莫大な身代金だった。タイムリミットは24時間。それを過ぎれば、犯人グループはダムを爆破すると宣告する。そうなれば、下流域の住民20万世帯を洪水が襲うという未曾有の大惨事が起こってしまう。折りしも天候が悪く警察も手をこまねく中、敢然と一人の男が立ち上がる。偶然犯人グループの手を逃れて隠れていた、ダムの運転員・富樫輝男だ。人質となっている今は亡き親友の恋人や同僚たち、そして住民の命を守るため、たった一人で富樫は敵に闘いを挑んでいく

。原作である真保裕一の同名小説は、1995年に発表されて大ベストセラーを記録した。

■背筋にゾクッとくるような 焦燥感と気概に満ちた表情

タイトルの“ホワイトアウト”とは、気象上の用語。吹雪で発生したガスや舞い上がった雪などが原因で、空間が白光に満ち、方向感覚や距離感が計れなくなってしまう現象のことをいう。

映画の中では、原作にある通りこの苛酷な気象状況が迫力の映像で再現されている。それももちろん見どころのひとつなのだが、特筆すべきは主役の富樫を演じる織田の“気迫”だ。壮大なスケールの原作を消化しきれていない感が映画にはあるが、そんなことは全て払拭してしまうような勢いが、織田にはあるのだ。

テロリストたちに慣れない銃で応戦するアクション・シーンも見応え十分だが、吹雪の中で顔を青ざめさせながら、それでも仲間を助けようと這いずるようにして雪の中を進んでいく時の表情は、背筋にゾクッとくるような焦燥感と気概に満ちている。 『踊る大捜査線 THE MOVIE』の青島刑事役はTVシリーズからの延長線上であり、同じ共演者や監督など、いわば安定した状況の中で演技をすることができた。

だが、『ホワイトアウト』は『踊る~』の大ヒットの次の作品で、誰もが期待を寄せており、しかも巨費を投じたエンターテイメント大作。何重ものプレッシャーが、織田の双肩に重くのしかかっていたはずである。ところが織田はそのプレッシャーに見事に打ち勝ち、多くの観客を劇場へと足を運ばせることに成功したのだ。

「俺がやらなければ誰がやる!」と孤軍奮闘する富樫の姿に、そのまま俳優・織田裕二の頑張りを見る思いがする。

 
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