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アカデミー賞受賞経験を持つ社会派が、アブグレイブ刑務所捕虜虐待事件に迫る!

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社会派エロール・モリス監督
社会派エロール・モリス監督 - 写真:Nobuhiro Hosoki

 ドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』で2003年にアカデミー賞長編ドキュメンタリーを受賞したエロール・モリス監督が新作ドキュメンタリー映画『スタンダード・オペレーティング・プロシジャー』(原題)について語ってくれた。本作は2004年に、アブグレイブ刑務所での捕虜虐待にかかわったアメリカ軍人にインタビューを試み、世界中に報道された写真とともに当時のずさんな管理下にあった状況を暴きだした作品だ。

‐どうやって捕虜虐待の当事者にインタビューすることに成功し、彼らの信頼を得たのですか?

(エロール・モリス)実際、かなり時間がかかったよ。ずっと粘り強くインタビュー取材を嘆願してきたんだ。その中で、私が一番最初にインタビューに成功したのが、刑務所の管理を担当していたジャニス・リー・カルピンスキ准将(じゅんしょう)で、ボストンで約17時間分を2日かけて撮影したんだ。インタビューの際に彼女の怒りが読み取れ、彼女もあの虐待事件のスケープゴート(身代わり)に過ぎないと実感したんだ。その中で、過去に報道された虐待写真の中で、実際に虐待を行い、写真に写っている関係者を中心に描くように心がけたよ。

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‐映画内で使われている写真が改訂されずにいることはいいと思うのですが、当然事件にかかわった人物たち(被害者も含め)を再び中傷することになりますね? あなたはこのことについてどう対処されたのですか?

(エロール・モリス)いろいろな対処法があると思う。一番問題なのは、これらの写真に映し出された虐待のシーンよりも、写真を撮った人物がアメリカに恥をかかせたということで非国民扱いされ、非難されていることなんだ。写真を撮ることやそれを見せることが罪ではなく、そこに映し出されたものに罪があるということを人々は見失っている。重要な証拠が改訂されないことに意味があり、もっとも大切なことなんだ。

‐最初に虐待された写真を見て、直感的に何を感じ、どういった衝撃がこの映画製作にあなたを駆り立てたのでしょうか。

(エロール・モリス)捕虜虐待の写真を目にしたとき、何か言いようのない不思議な感覚に襲われたんだ。それは珍しい感覚ではなかったが、「何が一番恐ろしく感じるかと言うと、それはあの捕虜たちが皆ポーズさせられていることだ」と書かれていたニューヨークタイムズの記事を読んだときに、わたしには政治的問題を抜きにして、何か羞恥という逃れられない質問がわれわれに突き付けられているような気がしたんだ。ある意味、強迫観念じみていたね。

‐スタンダード・オペレーティング・プロシジャー(標準業務上)についてどうお考えですか?

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(エロール・モリス)裸にさせられたイラクの捕虜をピラミッド型に山積みにしたことがとんでもない性犯罪に問われたのに対し、同じように裸にされ、頭に女性のパンティーを被らされているものが単なるスタンダード・オペレーティング・プロシジャー(標準業務上)の行為とされ、まったく罪にも問われないことがわたしには納得できない。確実に言えることは、あの場にいた兵士がこの政策を作ったわけではなく、彼らが最初に目撃したことを、彼らはそのまま実行し続けていたということなんだ。

‐虐待の主犯格チャールズ・グレイナーと話すことは許可されませんでしたね?

(エロール・モリス)そう、彼とイヴァン・フレデリックは許可されなかった。2人共刑務所にいたからね。リンディ・イングランドは、去年の4月に仮出所して、その1か月後に釈放されてからインタビューができた。イヴァンは去年の11月に釈放されたが、彼が刑務所にいる間はまったくアクセスすることができなかった。近い将来、この2人と話すことができることを望んでいるよ。

 刑務所にいた2人は別として、有罪となった人物にこれほど接触し、インタビューを敢行した執念には敬服してしまう。捕虜虐待の場にいた人だけにしかわからない真実が、本作を通してわれわれに重くのしかかってくることはまず間違いないだろう。(取材・文:細木信宏)

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