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親日家のフェミニスト監督、“おなべ”という日本独自の言葉について語る

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フェミニストとして知られる、キム・ロンジノット監督
フェミニストとして知られる、キム・ロンジノット監督

 今年のサンダンス映画祭で審査員賞を受賞したキム・ロンジノット監督が新作映画『Rough Anties』(原題)や過去に日本で製作した映画『幻舟』『新宿ボーイズ』などについて話してくれた。キム監督は、女性の抑圧、差別、暴力などを浮き彫りにし、苦難と闘う女性を描くフェミニスト作家としても知られている。

 5作品ものドキュメンタリーを日本で制作するほどの親日家であるキム監督。「とある新聞の記事で、舞踏家であり作家でもある花柳幻舟の記事を読んだんです。その記事の中には、わたしが知っていた、黒澤明監督の映画に出てくるような日本人女性とはまったく違った女性の姿があったんです。幻舟は階級制の日本舞踊界の中で、自分の師匠を刺して刑務所に入り、服役中にさまざまなことを独学で学んでいたという事実を知って、とても衝撃を受けました。彼女に会いたい一心で日本に行きました。実際の幻舟は勇敢で、これまでに会った女性の中でも、一番感情豊かな人でしたね」と日本へ興味を持ったきっかけを話してくれた。その際の映画『幻舟』は、アセン国際映画祭でグランプリ獲得。なお、原題は『Eat the Kimono』、「着物を食え」という意味だ。

 男装し、男のようにふるまう女性を指した“おなべ”という言葉に興味を持ったキム監督は、新宿歌舞伎町にあるおなべバーで働く女性たちを追った『新宿ボーイズ』を1995年に製作した。「おなべという言葉があること事態、日本は他国に比べて、物事を受け入れやすい国だと思いました。イギリスでは、そんな言葉は存在しないし、そういった行為自体を認めない人が多いです。日本は面白い国だと思いますね。たとえば歌舞伎では男性が女性を演じていますよね? それは男性にとって理想の女性像でもあるわけです。ということは女性が男性になるおなべは、女性にとって理想の男性であると考えることができるわけです」と語ってくれた。

 女性のための映画を製作し続けることについて「女性であることを反映させたものを撮り続けてきただけで、特別にこういう題材だからという理由で撮影してきたわけではないです。わたしは絶対に被写体に対して指示はしませんし、わたし自身されたくもないんですね。なぜなら、その方が描かれている人物が生き生きして、力強く見えるからです」と語る。キム監督は自ら撮影も手掛けている。次回作はインドで撮影が始まるそうだ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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