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弱い男が刑務所でのし上がる、カンヌでグランプリ受賞の『ア・プロフィット』-ロンドン映画祭

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ジャック・オーディアール監督(左)とアブデル・ハフ・ダフリ(右)
ジャック・オーディアール監督(左)とアブデル・ハフ・ダフリ(右) - Photo:Yukari Yamaguchi

 10月24日(現地時間)、第53回ロンドン映画祭で映画『ア・プロフィット』(英題)のイギリス・プレミアが開催された。プレミアに先立ち、ジャック・オーディアール監督と脚本のアブデル・ハフ・ダフリが会見を行い、カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した本作について語った。

 本作は、フランスのアラブ青年マリックが刑務所でのし上がって行く様を描いた犯罪ドラマ。刑務所内に何のつてもなかったマリックは、所内のボスに依頼された殺人を成功させたのをきっかけに、数度の仮出所では外での仕事も請け負い、次第に力を持っていく。

 ストリートとの愛ある関係が映画になると映画制作を説明するオーディアール監督、暴力シーンの多い本作で愛とのバランスはどうとったかという質問には、すかさずダフリが「愛は僕で、暴力はこちら」と監督を指す。リアルな描写が続く本作だが、オディアール監督は「これがフィクションであることを忘れてもらっては困る。フランスのあちこちの刑務所の要素は入っているが、実際の刑務所でこんなにおおっぴらに犯罪行為が起こるわけがない」と笑う。

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 本作でギャングの抗争の背景になっているのが人種問題だ。刑務所内でも人種によるグループで争いが起こる。オディアール監督は「アメリカあたりと違って、フランスではアラブ系の人々は肉体労働者かテロリストだと思われがちだ。この映画に出演したアラブ俳優たちがもっと知られるようになればうれしいよ」と思いを語った。

 リアルで非情な暴力が描かれながら、頼りない弱い者として登場するマリックがどんどん強さを身につけていく様子が小気味良くもある本作だが、オーディアール監督自身は「ギャングに魅力は感じない」と話す。本作のリアルな描写は、義弟が警官だというダフリの脚本によるところも大きかったようだが、監督との力関係についてダフリは「ジャックは水で、僕は火。火はいつも水に負けるんだ」とユーモラスに例えた。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)

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