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南アフリカのアパルトヘイト政策の中、黒人差別反対の声を上げた白人女流詩人イングリッド・ヨンカー-トライベッカ映画祭

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(左)カリス・ファン・ハウテン、(右)パウラ・ヴァンデルウスト監督
(左)カリス・ファン・ハウテン、(右)パウラ・ヴァンデルウスト監督

 映画『ブラックブック』や『ワルキューレ』で注目を浴びたオランダ出身の女優カリス・ファン・ハウテンが、新作『ブラック・バタフライズ(原題) / Black Butterflies』について、トライベッカ映画祭(The Tribeca Film Festival)で、パウラ・ヴァンデルウスト監督とともに語った。

カリス・ファン・ハウテン出演映画『レポゼッション・メン』場面写真

 同作は、南アフリカのアパルトヘイト体制の中、ラディカルな思想で黒人差別反対の声を反映させた詩を執筆した白人女流詩人イングリッド・ヨンカー(カリス・ファン・ハウテン)は、アパルトヘイトの政策を推進する保守的政治家の父親アブラハム(ルトガー・ハウアー)と対立するが、妻のいる男性作家たちとの自由奔放な関係を通して恋と詩に情熱を捧げていく。感情の起伏の激しいイングリッドを演じるカリス・ファン・ハウテンに注目だ。

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 イングリッド・ヨンカーを演じる上で、どのようなリサーチと下準備をしたのかとの質問に、カリスは「正直、脚本を渡されるまでは、彼女のことについてはほとんど知らなかったの。まず、過去にオランダ人が制作したイングリッドのドキュメンタリー作品を観てから、彼女の詩やアフリカーンスで書かれた南アフリカの書物を読んだの」。(アフリカーンスはオランダ語から派生した言語で、オランダ人であるカリスは、翻訳されていないままイングリッドの作品を読むことができたらしい)さらに「彼女の娘や知人にも会って情報を得たわ。ただ、一番大変だったのは南アフリカのアクセントで、英語を喋ることだったの」とかなりのハードルを越えて、役に挑んだことを答えてくれた。(映画は、全編英語で描かれている)

 アパルトヘイト体制下にあった南アフリカ政権と、イングリッドの繰り広げる恋愛とのバランスを脚本家のグレッグ・ラッターとどのように構成していったのか。パウラ・ヴァンデルウスト監督は「グレッグとは良いコラボレーションだったと思うわ。彼は準備に余念がなかったの。まず大学にある図書館で、イングリッドの恋人で作家のジャック・コープの日記を見つけ出してきて、それをベースに初稿を書いたの。それからわたしが加わって、さらにイングリッドと父親の関係をもっと肉付けしていったの。そのため政治的要素は、少し陰を薄めているように見えるけれど、イングリッドの父親自体がアパルトヘイトを推進しているから、政治的な要素は個人的に十分あると思うわ」と語ったとおり、時代背景がもたらした影響も映画内でしっかり描き上げている。

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 映画『ブレードランナー』や『ヒッチャー』なども含め、普段アクション作品では助演役の多いルトガー・ハウアーが、この映画の父親役では素晴らしい演技をしている。「ルトガーは、これまでいろいろな悪役を演じてきた中で、この父親役のアブラハムが最も悪い男だと言っていたわ。特にアブラハムが娘イングリッドの前で取る態度はすごく醜いの。この役は、ルトガーにとってはかなり難しい役だったけれど、セットでのルトガーは、この役が保守的な冷たい男なのか、それとも少しぐらい感情を持ち合わせているのか?とか、役柄を模索したうえで、即興なども含めて演じてくれていたわ」とパウラ監督が述べたように、ルトガーの演技は観客に強烈な印象を植え付けることになるだろう。

 最後に、このイングリッド・ヨンカーの詩、“The Child is not Dead”を、1994年に南アフリカ史上初の全人種参加選挙で大統領に就任したネルソン・マンデラが、国会開会のオープニングスピーチで朗読したことで、イングリッドの認知度が高まったらしい。映画は、一つの時代を情熱的に生きた詩人の人生が秀逸に描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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