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「X年後」のタイトルに込めた意味…社会派ドキュメンタリー監督が反響の少なさを嘆く

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トークショーを行った鎌仲ひとみ監督と伊東英朗監督
トークショーを行った鎌仲ひとみ監督と伊東英朗監督

 複雑な問題の絡み合う「今」という時代を考えるヒントになるドキュメンタリー作を集めた映画特集「夏の終わりの自由研究-繋がっていく面白さ、映画に学ぶ2週間-」のオープニングとして、鎌仲ひとみ監督作『ヒバクシャ 世界の終わりに』と、伊東英朗監督作『放射線を浴びた[X年後]』が渋谷アップリンクにて上映され、両監督によるトークショーが行なわれた。作品で共に放射能の「低線量被曝」を扱った2人は、「3.11のX年後」への強い関心を語りあった。

映画『放射線を浴びた[X年後]』場面写真

 鎌仲監督の『ヒバクシャ 世界の終わりに』は、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾により白血病に苦しむイラクの子どもたちや、アメリカのプルトニウム工場近隣住民たちの健康被害を追うもの。対して伊東監督の『放射線を浴びた[X年後]』では1954年のビキニ環礁で被爆した第五福竜丸以外にも、アメリカの100回以上に及ぶ核実験により被爆した日本漁船が多数あったことを証言により明らかにする。両作とも環境中に放出された放射性物質に、それと知らされぬ間に曝された人たちのその後を追っている。

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 まず鎌仲監督が「放射能と内部被曝については『X年』という方が本質を突いている」と語った。「具体的な症状が表れるのが、明日なのか、5年後か10年後かなのか、はっきりわからないのが被曝問題の難しさ。現場に行けば、明らかな因果関係は肌で実感できるのに、それを科学的、統計的に証明しようとするときに、X年という不確定さが立ちはだかる」と明かす。

 その「X年」を自作のタイトルに用いた伊東監督は「ビキニ事件を知り、その後の60年間で何が起こったかを見ることで、福島のX年後を考えることができると思った」という。「ビキニ事件でも、水が汚染され魚が被曝し、それについて国から正確な情報を知らされないまま人々が食べる。その繰り返しです。60年前と今がダブって見える。ただ公開して1年経ちますが、映画を通して呼び掛けてきた調査に対する反応が少ないので自信をなくします」と偽らざる心境を吐露し、その反響の少なさを嘆いた。

 今は「日本の、魚を食べる文化の危機」という鎌仲監督は「伊東さんの作品は、これからますます重要になる海洋汚染を扱った貴重な作品。1年で音をあげないでがんばってください」とエールを送っていた。(取材/岸田智)

『放射線を浴びた[X年後]』と『ヒバクシャ 世界の終わりに』は渋谷アップリンクで9月6日まで行われる特集「夏の終わりの自由研究-繋がっていく面白さ、映画に学ぶ2週間-」で上映 同特集では鎌仲ひとみ監督の『ミツバチの羽音と地球の回転』も上映される

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