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スタジオジブリの歴史は「世代交代に失敗した歴史」 宮崎吾朗監督がジブリの現状と今後を語る

第77回カンヌ国際映画祭

鈴木敏夫プロデューサーが制作したカンヌ映画祭用のトリビュートポスター
鈴木敏夫プロデューサーが制作したカンヌ映画祭用のトリビュートポスター - (c) 2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli (c) 2024 Hayao Miyazaki - Toshio Suzuki

 現地時間20日に第77回カンヌ国際映画祭で、スタジオジブリのこれまでの功績をたたえて、名誉パルムドールの授与式が行われる。三鷹の森ジブリ美術館とジブリパークも含むジブリ全体を代表して授与式に登壇する宮崎吾朗監督が、前日に合同取材に応じ、ジブリの現状と今後を語った。

美しい…『君たちはどう生きるか』ギャラリー

 名誉パルムドールが個人ではなく集団に対して授与されるのは、今回が初となる。吾朗監督は「喜ばしいことです。スタジオにとってもそうですし、ジブリ美術館とジブリパークのスタッフにとっても、直接スタジオじゃない場所の仕事も評価してもらえたということになるので、ジブリ全体として喜べる賞なんじゃないかなと思います」と喜びを語る。

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 父・宮崎駿監督の反応はどうだったのだろうか?「『よくわからないけど、ありがとうございます』と。全然ぴんと来ていない感じでしたけど」と笑った吾朗監督。今年3月には駿監督の『君たちはどう生きるか』が米アカデミー賞で長編アニメ映画賞に輝くなど喜ばしい受賞が続くが、吾朗監督は「(父も)若い頃は憎まれ口をたたきながらもうれしそうに賞を頂戴してきましたが、今は80歳を超えていますし、賞っていうのは過去やってきたことに対するものじゃないですか。なので、あまり気にしていない感じはしますね。自分があとどれだけ生きられるかというなかで、何をやるか。『それはさておき、俺は今目の前にあることをするんだ』という顔をしています」と駿監督の様子を明かした。

 昨年『君たちはどう生きるか』を公開したジブリの現在の状況については、「ほうけていますね。全然ダメですね、今は」とさらり。「やはり7年かけてアニメーション映画を作るというのは、監督もそうですが、スタッフにとってもものすごく疲れること。そこから回復するのに時間が必要だと思うんです。ジブリパークも同じくらいの時間をかけてやっていて、それがオープンして、そっちのスタッフもやっと、という状態。スタジオ全体が今、弛緩しています」。現在は充電期間だと捉えているのだという。

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 一方で、駿監督は昨年の『君たちはどう生きるか』公開後、すぐに次回作の構想を考え始めていると伝えられている。しかし、駿監督は具体的なことは秘密にしているといい、「言わないんですよね。絶対、誰にも言わないですよ」と吾朗監督。「あの年になっても、周りのアニメーターは全員ライバルなんです。年下だろうが、自分を支えてくれるスタッフだろうが、社内であろうが社外であろうが、アニメーターと名前が付いたら全員ライバル。だからそういう人たちに、うっかり自分の企画を話さないようにしているんです。やっぱり『これだ』というものになるまでは、明かさないんです」

 ジブリの今後について問われると、「どうなるんですかね、全然わからないんです。結局、ジブリの歴史は、世代交代に失敗した歴史なんですよ」と切り出した。「宮崎駿が最初に長編から引退すると言ったのは、『もののけ姫』(1997)の後。ジブリ美術館を始めようと言ったのも、世代交代のためだったんです。俺も引退するから、年取ったアニメーターも全員引退しろ、と。引退して働く職場として、ジブリ美術館を用意してやるから、お前らも一緒に引退するんだぞ、と。余計なお世話なんですけどね(笑)。結局、そうはなりませんでした。そこから始まって都度、都度、次にどうやって手渡していくのかという話をしつつ、結局今でも宮崎駿と鈴木敏夫(プロデューサー)がやっているわけですし、スタジオの大事なことに関して言うと、やっぱり彼らが決めるというところが大きいので、どうなんですかね? 二人がいなくなったら、あらためて考えればいいんじゃないかなという感じです」と笑った。

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 それでも近年、世界におけるジブリのファン層はどんどん広がっている。2020年にNetflixが日本、アメリカ、カナダを除く世界190の国と地域でジブリの過去作の配信を始めたことで、初めてジブリに触れ、その虜となる人が続出した。「ここまで広がるとは思っておらず、僕らの方が驚いているのが正直なところです。オープン時のジブリ美術館では、海外からの来館者といえば韓国か台湾か香港かフランスだったんです。ヨーロッパはフランスだけでした。それが今はヨーロッパ中です。ジブリパークも同様で、アジアも全域になっています」。もはや、ジブリが充電期間を終えるのを心待ちにしているのは日本だけではない。世界から熱い視線が注がれている。(編集部・市川遥)

第77回カンヌ国際映画祭は現地時間5月25日まで開催

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