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2002年4月

私的映画宣言

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情報誌等で活躍するライターや編集者が毎月5本の映画を評価! 映画を観ることに関しては‘プロ’には違いないが、プロといえども人の子。作品の出来の善し悪しに関わらず、好き、嫌いはどうしてもつきまとう。このコーナーでは作品評価の他に個人的な好みを★5段階で表現した。ただしあくまで映画は私的なものなので、ここでの評価が低いからといって読者にとってつまらない映画かといえば……それは劇場へ行って自分の目で確かめよう!
 

映画ライター。明快なのに珍妙な味わいの映画が好き。ファレリー兄弟に敬服してます。ハリウッド製のラブ・ロマンスは苦手。ゲイのロマンスに惹かれる傾向あり。最近は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』にとりつかれた!
ライター。アラン・リックマンに、ジョン・マルコヴィッチ、チェッキー・カリョなど悪役がサマになるオヤジ俳優好き。ジャンル的にも男の悲哀を感じる作品にハマりがち。一方で、『サボテン・ブラザース』のようなおバカなコメディも実は好き。
編集者&ライター。生涯ナンバー1は『フレンチ・コネクション』。ジーン・ハックマンのポパイは最高! ジャンルでいうと刑事もの、オカルト系には無条件に心惹かれる。しみじみとしたヨーロッパ映画も好き。
コラテラル・ダメージ

ストーリー: ベテラン消防士のゴードン(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、コロンビアのテロ組織「ウルフ」による爆破事件で妻子をなくす。偶然、現場に居合わせた彼は犯人を目撃するが、外交を優先した政府は犯人を追わなかった……。
日本公開: 4月20日
(丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー)
配給: ワーナー・ブラザース映画
(C)2001 Warner Bros. All Rights Reserved


一介の消防士VSテロリスト。一般人のアマチュアな発想が逆にプロのテロリストには有効で……という展開にはならない。やはりシュワがスーパーな活躍をしちゃう。もう食傷です。さらに消防士だから“火”にまつわる方法でテロリストに対するという弁明じみた設定も悲しいし、消防士にしてはその手段がテロリストっぽいのも気になる。だけど脚本はそれほど悪くない。元左翼の非力な化学者を主人公に据えたら面白かったんじゃないかな。


妻子が爆弾テロで殺され、シュワ扮する消防士が復讐に燃える。テロリストの本拠地コロンビアに乗り込む無謀さや、タトゥーロにレグイザモのもったいない使い方。シュワ映画だから目はつぶる。でも、敵討ちとはいえ、消防士なのに火事&爆破でやたら攻撃。職業的倫理観はないのか? 米軍はゲリラの村をヘリで襲撃し、女子供が巻き添え食ってるし。大義があれば、目的のための犠牲=コラテラル・ダメージは致しかたないってか。結局はアメリカに都合いい話だ。


普通によくできているアクション映画。気が付いたらロサンゼルスの一介の消防士がテロリストの本拠地コロンビアでバスに乗ってたり、割と順調に敵のアジトにたどりついちゃう荒唐無稽さも、シュワなら全部許される。なので作品のメッセージ性を云々するのはおかど違いな意見だとも思うが、個人的にはこの手の映画は観たくなかったというのが本音。今となっては、テロリストへの復讐物語を娯楽として楽しむのはちょっと難しい。

陽だまりのグラウンド

ストーリー: ギャンブルにおぼれ借金の取り立てにおわれるコナー・オニール(キアヌ・リーブス)は週500ドルの報酬にひかれ、低所得者住宅地区の少年たちで結成された野球チームのコーチを引き受ける。普段は接することのない子供たち相手に、はじめは戸惑うコナーだったが……。
日本公開: 4月20日
(全国松竹系)
上映時間: 1時間46分
配給: ギャガ・ヒューマックス / 松竹


キアヌの演技でこちらが照れ臭くなるのと、『がんばれ!ベアーズ』の設定を丸パクリにしてるのがマイナス。マイナスなんだけど、段々やられちゃうのだ。キアヌはギャンブルと酒に溺れるダメ人間を演じだすと俄然輝きだすし、広大なスタジアムを見た少年たちの輝く表情を見せつけられると、泣くまいと思いつつも涙なのだ。おまけに故ノトリアスB.I.Gの曲をかくもドラマティックに使ったのは画期的だ。♪ベイベー、ベイベー♪


ギャンブル好きなダメ男が少年野球チームのコーチになる……。と書けば、もうその後の展開は見えている。でも、少年たちは犯罪が横行するスラム街で暮らしているという設定。そんな暗い現実から逃れる手段が野球というあたりは、興味を引く。演じてる子役もイキイキして上手い。おかげでキアヌの見せ場もあり、不覚にも涙誘われた。しかしなー、このノホホンな邦題、何とかならんか!


ものすごくベタな設定でこの邦題じゃぁ、泣けと言わんばかり。と、反発を感じつつ観たら、これが意外にもハマってしまった! 劣悪な環境の中で生きる子供たちが野球に憧れる姿や、「(子供たちに必要とされたおかげで)自分の存在が初めて意義のあるものに思えた」と語るキアヌの演説にボロ泣き(涙もろいのは年のせい?)。それにしてもキアヌ。相変わらずお世辞にも上手いとは言えないけれど、なんとなく憎めないんだよね~。

アザーズ

ストーリー: 舞台は1945年のイギリス。古い屋敷にグレース(ニコール・キッドマン)と彼女の2人の子供たちが暮らしていた。ある日、3人の召使を屋敷で雇う事になったが、彼らが来てから屋敷の中で奇怪な物音や超常現象が起き始める。
日本公開: 4月27日
(丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー)
上映時間: 1時間44分
配給: ギャガ・コミュニケーションズ


ドラマとしてのクォリティは高いし、ホラーとしても上質だ。文句はない。ただ一つ。予見や予断が作品の楽しみの何割かを奪う。簡単な一言で要の“ソレ”がバレてしまう。そこが唯一の欠点だ。この作品の紹介などを一切見聞きしない事をオススメする。見ると決めたらこの文章も読まなくてイイ。そうやって情報を遮断してスクリーンに向かったあなたは、情報を飽食した周りの人々の何倍もこの作品を楽しめるはずだ。私もそうしたかった!


ニコール・キッドマンのゾクッとするよな冷たい美しさが効きまくったゴシック・ホラーだ。娘と息子に異常なほど厳しく、神経質で全編ピリピリの彼女の演技が、何かあるある感を高めていく。血みどろシーンなどなくても、身の毛もよだつ恐怖に襲われるぅ~。アメナバール監督の手腕もあるが、プロデュースしたトム・クルーズは元妻に合うキャラがよくわかってんだな。でも、一番怖いのは息子役かも。薄い~っ眉毛で不気味すぎな顔。夢に出てきたらうなされそうだ。


霧に包まれた古い洋館に、クラシカルないでたちの美女ニコール・キッドマンがたたずんでいるだけでもうOK! ニコールって本当に美しいわ~。もちろん、なんとな~くなんかありそうな不吉な“気配”を感じさせる、アメナバール監督の演出手腕も。ラストのオチがまた話題になるんだろうけど、品のいいオカルト・チックな雰囲気に浸るだけで私にとっては大満足な一作。

キューティ・ブロンド

ストーリー: ファッション販促を専攻するエル(リース・ウィザースプーン)は、「君はブロンドすぎる」と、政治家志望の恋人にふられてしまう。猛勉強の末、彼を追ってハーバード大に入学したエルだが、チワワを抱え全身ピンクに決めた彼女に周囲の視線は冷たくて……。
4月27日
(渋谷東急3他全国松竹・東急系)
上映時間: 1時間36分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2001 TWENTIETH CENTURY FOX


違和感だらけで観始めた。まず主演のリース・ウィザースプーンが美人という設定が無理。コスモポリタン誌を愛読しているのも気持ちが悪かった。ギャグも冴えないし、法廷闘争も馬鹿だ。ところがコレが面白いのである。ステレオ・タイプにしか見えなかった主人公を一人の女性として魅力的に描き出していく。最後には彼女を必死で応援しちゃってた。始まりと終わりでこれだけ自分の立場が変わってしまった作品も珍しい。必見です。


オツム空っぽで外見が命のヒロインが、一夜漬け的な受験勉強とコッポラ制作の自己PRビデオで、超難関を突破かぁ? んなバカな!とツッコミを入れたくなるが、全編、んなバカなの連続。しかし、どんな試練にも(イジメにも)メゲず、どこまでも自分のスタイル(ド派手ファッション&愛犬とほとんど一緒)を崩さずに突っ走るポジティブさがアッパレなのだ。主演のリースもおきゃんな雰囲気を前面に出して好演。ブリブリ歩きも最高だぁ!


リース・ウィザースプーンが美人という設定はどうなんだろうか? あの額に寄っているシワはいいのか? などという疑問は誰もが抱きそうだが、観ているうちにそんなことは些細な問題という気になるはず。徹底しておバカなキャラを体当たりで演じるリースは、特に女の子には好感度満点だろう。この手のひたすらお気楽なコメディが大当たりして、パート2やらTV化やらの話がすぐ浮上するあたりが、いかにもアメリカだなぁとしみじみ思う。

バーバー

ストーリー: 平凡な床屋の男エド(ソーントン)は、ある日の客から、新しいビジネスの話を聞かされる。興味を持った彼は、資金の為、妻の不倫相手に脅迫文を送り恐喝。しかし、これがきっかけで悲劇が起こり、彼の人生は転落に向かう。
日本公開: 4月27日
(丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー)
(恵比寿ガーデンシネマ、シャンテ シネ)
上映時間: 1時間56分
配給: アスミック・エース エンタテインメント


多分コーエン兄弟って物語の見せ場をくっきりと際立たせる演出をとても下品な事だと思って嫌っているのだろう。だから物語は“リアルで普通”に淡々と進む。そして唐突に訪れる恐怖や破綻……。『ファーゴ』でもそうだったが、その演出が好きになれない。確かに人間てのは事件に遭遇しても案外普通にしているものかもしれない。だけど起伏なく淡々と描かれても、淡々と退屈なのである。『オー・ブラザー!』の逸脱があればなぁ。


ちっぽけな野心を抱いたばっかりに、人生ドツボになる主人公。ビリー・ボブは濃ゆ~い顔だが、モノクロだとそれが思いっ切り情けなく見える。女房に浮気もされ、怪しい儲け話に簡単に乗り、妻の不倫相手に逆ギレされても当然だろう。ホント哀れな男に成り切ってるよ、ビリー・ボブ。でもコーエン兄弟作にしてはフツー。不条理さの描き方もパンチが足りない。設定された時代背景などを上手く取り込んでいるとはいえ、まともな人生訓に陥った気がして残念。


コーエン兄弟のこれまでの作品と同じく、本作の完成度も高いレベル。モノクロの映像もすばらしく美しい。ただ、個人的にはすごく上手く演じているにも関わらず、ビリー・ボブがとっても冴えない田舎の理髪師という設定に違和感を覚えた。どう考えてもビリー・ボブの鋭利な目の光には、凡人とは違うなにか特別なものを感じてしまうのだが……。『ゴースト・ワールド』の女の子スカーレット・ヨハンソンが個人的に大変おすすめ!

 似顔絵イラスト:川合夕香

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