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サードシーズン2007年12月

私的映画宣言

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私的映画宣言 サード・シーズン12月

筆者の近況報告

中山治美

2年前に勢いで買った着物のローンは払い終わりましたが、まだ1人じゃ帯を結べません。昔の人は、どうやって習得したのでしょうか。夢はカンヌやヴェネチア映画祭でさらりと着こなすことでしたが、早々に断念いたしやした。

斉藤博昭

某誌で2007年ベスト10を考えてたら、結局1位『ヘアスプレー』。直後、早くも『スウィーニー・トッド』が来年のベスト10入り当確(ジョニーもいいが、サシャ・バロン・コーエンが強烈!)。学生時代のミュージカル熱がプチ復活~。

鴇田 崇

年末恒例、映画番組の収録。『スウィーニー・トッド』紹介のくだりで“日本のエド・ウッドとしてはいかがで?”と“御大”にふったら怒られた。当たらずとも遠からずだと思うのだが、オンエアで編集されないことを祈る。

相馬 学

2007年は脱メタボ年! しかし20キロ減はヤセ過ぎという医者の警告に頭を痛めつつ、年末進行に振り回される毎日。公開初日に『AVP2』を観てポップコーンを食べることが目下の楽しみ。甘味は控えていたが、今ならキャラメル味でも許される!?

今 祥枝

昔から大のフィギュアファン。コメディー『俺たちフィギュアスケーター』を観るも、気が付くと「回転が遅いっ、スピードに乗ってないっ」とお門違いなダメ出し(笑)。そのたびに、そういう映画じゃないでしょ! と自分にツッコミ。

椿三十郎


(C) 2007「椿三十郎」製作委員会

黒澤明監督と三船敏郎のコンビが1962年に放った傑作時代劇をリメークした、痛快時代劇エンターテインメント。黒澤監督のオリジナル脚本をそのままに、映画『サウスバウンド』の森田芳光監督が、邦画史上最も人々に愛されたヒーローをスクリーンによみがえらせた。椿三十郎を織田裕二、その宿敵である室戸半兵衛を豊川悦司が演じ、松山ケンイチ、鈴木杏、中村玉緒らが脇を固める。必殺剣を使うダイナミックな立ち回り、心意気あふれる三十郎の人となりに引きつけられる。

[出演] 織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ
[監督] 森田芳光

中山治美

8点賛否両論ありますが、わたしゃ森田版の映画『椿三十郎』好きですね。黒澤版のテンポの良さを踏襲しつつ、森田色もしっかり。前作『サウスバウンド』では見られなかった、森田監督らしい人間のいやらしさやおかしさを誇張する演出に笑った。人質のはずが若侍に加勢している佐々木蔵之介や、三十郎を世話する森下千里ら女中三人衆のウザさは最高。その一方で、今が旬のマツケンを目立たせるのではなくほかの若侍とバランス良く配置。及第点をあげたい。

斉藤博昭

6点オリジナル版を劇場で観たときの痛快さと衝撃を記憶する者としては、これを冷静に判断すること自体が不可能。三船敏郎の幻影を辛うじて取り除くと、織田裕二の演技は(彼のほかの主演作に比べ)敢闘賞モノか。問題はリメークの方法で、脚本が一字一句そのままというのは疑問。現代の若い観客にオリジナルの面白さを伝えたいなら、言い回しだけでも改変が必要だったのでは……。まぁ同じ脚本による大いなる「実験映画」と思えば、いろんな発見を楽しめるってものだ。

鴇田 崇

9点全体的にキャッチーな仕上がりなので、万人にオススメできる時代劇に。いや、時代劇風味のヒーローものか。“あのラスト”もレーティングの問題なのか、オリジナルとは全然違うし。森田監督の狙い通り、結果としては黒澤脚本のスバラシさが浮き彫りとなり、現代の若者たちにも広く黒澤映画を知ってもらえる機会が用意されたが、逆にこうでもしないと黒澤作品や過去の名作に目を向けてくれないのかと映画市場の狭さを痛感。寂しい。

相馬 学

6点黒澤版と比べるのは目に見えてるから寛容な気持ちで観ようと思っていたら、意外に面白かった。同じ脚本を使っているのだから当然と言えば当然だが。“モノクロは苦手、ミフネ誰それ!?”という若い観客に向けて間口を広げた点は素直に評価したい。ただ、血しぶきナシのクライマックスが作品のテーマを軽くしている点は不満。それにしても三船に比べて、織田“四十郎”の笑顔の軽薄なこと。現代人の精神年齢が半世紀前よりも下がっていることを図らずも痛感してしまった。

今 祥枝

6点「過去の名作を知るきっかけになれば」という作り手側の志を聞くと、確かに意義のあるリメークと嫌でも信じたくなる。でもね、面白いか面白くないかと聞かれたら、わたしは大して楽しめなかった。もちろん、オリジナルと同じ物語に破綻はなく、昨今の邦画メジャーの作品群を見渡してみるに出来は悪くないと思う。が、“笑わなくちゃいけないところ”で強いられた労力と織田裕二の役作りに肩が凝って、観終わった後は正直疲れましたわ……。

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アイ・アム・レジェンド


 (C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc

人類が絶滅した近未来を舞台に、たった1人生き残った男の奔走を描くSFドラマ巨編。映画『コンスタンティン』のフランシス・ローレンス監督が、映画『幸せのちから』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたウィル・スミスを主演に、自分以外の生存者を探す科学者が人類再生の道を模索する姿を描く。無人と化したニューヨークを背景に、希望と絶望が混在する究極の孤独の中で使命感に燃える科学者の姿にひきこまれる。

【出演】ウィル・スミス、アリス・ブラガ、サリー・リチャードソン=ホイットフィールド
【監督】フランシス・ローレンス

中山治美

7点上映時間2時間30分超えの正月映画もある中、うれしい1時間40分。物語も、ウィルのサバイバル生活に焦点を当ててスッキリ。その分、観る者の想像をかき立ててくれます。1人しかいないニューヨークで、電気・ガス・水道の供給はどうなってんの? とか、野生化したシカはウィルスに感染しないの? とか、そもそもウィルスが低温で死滅するならアラスカに行け! とか。まだまだわたしが愛する『28日後…』を超えるSFホラーは出てきませんな。

斉藤博昭

8点お正月映画の超大作と思って観ると、ややマニアックで小粒な印象だけど、作品の持ち味を素直に表現していて好感。冒頭、無人になったマンハッタンの光景はCGも駆使されまくりだろうが、違和感ゼロのリアル映像で恐れ入る。欲を言えば「感染者」のビジュアルにもう一工夫ほしかった。ここは監督のローレンスが『コンスタンティン』で地獄シーンをユルませた失敗が脳裏をよぎる。でもウィル・スミスの存在感と犬の演技は文句ナシ。点数オマケしてもいいでしょ!

鴇田 崇

8点『地球最後の男』を予習して臨んだけど、ウィル・スミスと『コンスタンティン』の監督にこんな魂胆があったとは! 10年間温めてきた企画だそうだが、エモーショナルなドラマに仕立て上げた、このアレンジはお見事じゃない? 最近のウィル・スミスはドラマの人のイメージが強いけど、ブルース・ウィリスが“不死身”のイメージを肯定したように、数作ごとに古巣というか得意のSFに戻ってきてくれる彼のファン満足度も高いと思う。

相馬 学

8点これも過去2回の映画化と比べてしまわざるを得ないのだが、“そうきたか!”という驚きがあって個人的には満足。妻子を亡くした主人公の贖罪(しょくざい)意識にフォーカスしたのが勝因か。結果、意外にも泣ける結末に着地しているのだから、これは技ありというべきだろう。フラッシュバックの導入も巧いし、ウィル・スミスの人間味にあふれた好演も高ポイント。しかし、何よりエンディングで流れるボブ・マーリィの名曲「REDEMPTION SONG」がシミた!

今 祥枝

7点同原作の3度目の映画化&『コンスタンティン』の監督かぁと期待しなかった分、ストレートでまじめな作りに好感を持った。お正月映画にしては暗いが、原作などに関係なく単純にウィル・スミス主演のSFアクションとして観に来た客の反応はいかに? そのスミスは頑張っていたが、「オレが人類を救う」的なセリフで妙にテンション下降。無力感も必死さも伝わってはきたけれど、そんなヒーローイズムに過剰な嫌悪感を覚える昨今。個人的には皮肉とひねりの効いた落ちが良かったな。

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ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記


 (C) Disney. All rights reserved

テンプル騎士団が残した宝の謎を描いたアクション・アドベンチャーの第2弾。今作で歴史学者にして冒険家、ベン・ゲイツの飽くなき冒険心を駆り立たせるのは、リンカーン大統領暗殺事件の背後に隠された歴代大統領のみが知るタブー。ニコラス・ケイジら前作の主要キャストとともに、ヘレン・ミレンやエド・ハリスなど豪華な顔ぶれが参加する。歴史が重要な鍵を握るアドベンチャーは、大人も子どもも心を躍らされる仕上がりになっている。

【出演】ニコラス・ケイジ、ジョン・ヴォイト、ハーヴェイ・カイテル
【監督・脚本】ジョン・タートルトーブ

中山治美

8点史実を基にした大胆なストーリーと、宝探しという夢に溢れたこの映画の世界観にワクワク。ところがゲイツはリンカーン殺害の容疑者となった先祖の汚名をすすぐため、敵役のエド・ハリスも「ワシの手柄にしたい」と私欲に走って、人間の器がちっちゃい、ちっちゃい。目的のためなら人の迷惑顧みずの行為も鼻つまみモノです。その、常に前に出たがる感じが米国人、いや、ブラッカイマー印の映画で大笑い。ヤツは期待を裏切らいね(笑)。

斉藤博昭

5点スタートからテンポのよいドラマに乗せるのは、前作を受け継ぐいい流れ。お宝探しの合間にうまく挟まれる丁々発止(ちょうちょうはっし)な人間関係ドラマに脚本の計算力が感じられるが、気が付くと一番楽しんでいるのは、その笑いの部分だった。肝心の「お宝探し」の物語は、あまりにトントン拍子過ぎて緊迫感が希薄になっていくのが惜しい。エド・ハリスの敵役の背景もぼやけ気味。前半のロンドンでのカーチェイスがものすごいので、その勢いが最後まで持続していればなぁ……。

鴇田 崇

7点トレジャーハンティング自体は確かに楽しいけど、歴史マニアのベン・ゲイツの知的好奇心が満たされるのと同じ視点とレベルで史実や都市伝説と向き合って、その場その場で仮説を消化吸収できないとハナシに乗れないような気が。理解していないと、お宝発見時のカタルシスも低くなってしまう。余談だけど、ダイアン・クルーガーよりヘレン・ミレンの方が露出度が高くって、妙に気になった。やたら色気もあるし、どういうこっちゃ。

相馬 学

6点黄金都市を発見することが、なぜ先祖の汚名を晴らすことになるのかは疑問だったが、2時間まったく退屈することなく楽しんだのも事実。とりわけ、大統領誘拐へと主人公が暴走する、ブレークオンスルーな発想が面白い。しかし前作もそうだったが、行き当たりばったりの展開がシリーズものに必要な吸引力をそいでいるのも事実。大統領機密文書47ページの逸話も取って付けたようだし。後腐れのなさという点では、ある意味、正月映画らしいのだが……。

今 祥枝

7点相変わらずのブラッカイマー印の大ざっぱさと予定調和を確認できて満足(笑)。雇われ監督らしく、可もなく不可もなくで物語はサクサク進む。バッキンガム宮殿に忍び込もうが大統領に直談判を挑もうが、とっても簡単。注目は悪役エド・ハリス。あまりにも短絡的な手段に訴える冒頭からクライマックスまで、唯一予想を裏切る意外性を発揮して大いに笑わせてくれる。もはやオスカーはあきらめの境地? そんなツッコミどころも含めて楽しみました。

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筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美鴇田 崇相馬 学
高山 亜紀小林 真里山縣 みどり
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