ADVERTISEMENT

サードシーズン2008年10月

私的映画宣言

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア

私的映画宣言 サード・シーズン10月

筆者の近況報告

中山治美

緒形拳さんが亡くなった。取材したいことがあったのに。ちなみに筆者が現場取材したのは『継承盃』と『さよならニッポン!GOODBYE JAPAN』。緒形さんの代表作として決して挙がらない貴重な2本です。

山縣みどり

映画祭開催中の釜山に1泊旅行。石鍋を約930円で購入したけど、チョン・ウソン関連グッズは手に入らずガッカリ。ウソンったら、韓国では人気がないの? 雑誌の休刊が相次ぎ、ライターとして不況を実感中です。

相馬学

このレビューがアップされるころには、出張先から帰国しているはずだが現在は出発前。仕事が前倒しされて忙しい。それはもとかく、11月公開作には『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『バンク・ジョブ』などベテラン監督の巧さが光る作品が多いぞ。

前田かおり

『バンク・ジョブ』に『エグザイル/絆』など、これからオヤジ好きにはたまらん映画がめじろ押し。先日は年末公開のレオの新作『ワールド・オブ・ライズ』でヨルダンの情報局のトップに見ほれた。オシャレでイヤミなぐらい隙がなくて、すんごいドS。最高っす。

今祥枝

どっぷり邦画ざんまいだった8、9月。中でも藤竜也氏の取材には感激! 頑固な職人気質に無類の愛妻家、かつ料理の腕がプロ級なのには驚くばかり。ちょいどころかかなりワルな雰囲気も粋でありました。

ハンサム★スーツ


(C) 『ハンサム★スーツ』製作委員会

ブサイクゆえにモテない人生を歩みながら、偶然出会った“ハンサム・スーツ”を着てハンサム男に変身した主人公の姿を描くラブコメディー。「ブスの瞳に恋してる」の人気放送作家・鈴木おさむがオリジナル脚本を手掛け、CMディレクター英勉が長編初監督を果たす。ハンサム男・杏仁役に谷原章介、ブサイク男・琢郎役をドランクドラゴンの塚地武雅が演じる。そのほか北川景子佐田真由美大島美幸ら多彩な顔ぶれがそろい、ドラマを盛り上げる。

[出演] 谷原章介、塚地武雅、北川景子
[監督] 英勉

中山治美

7点藤原紀香みたいなスタイルになりた~い!」とか、「ブラピのルックスを持っていたら人生変わっていたかも?」という誰もが一度は思い描いたであろう、こっぱずかしい妄想を堂々と映画にしたその勇気が素晴らしい。個人的には、『花より男子(だんご)』とか『デボラがライバル DEBORAH, THE RIVAL』のころの、ブっ飛んだ谷原章介を久々に堪能できて大満足。ただ、ビジュアルに凝るのはいいんだけど、色の洪水に慣れるのが時間を要した。ちょっとやり過ぎ。

山縣みどり

7点異常にマイ・ブームだった『ラブ☆コン』の脚本を書いた鈴木おさむが自作小説を脚色なので期待大。その期待が裏切られないどころか、鈴木から愛妻への愛情が伝わり、うっすら涙だ(いや、笑い涙なんですが)。外見コンプレックスというテーマを笑いにしたドラマに深みはないものの、「人間顔じゃないよ、心だよ」をウソと見切った大人を無垢(むく)な時代に一瞬だけ戻してくれるパワーは買い。塚地武雅が変身するハンサムを演じる谷原章介の中途半端な美男ぶりも役にピッタリ!

相馬学

5点自分をブサイクであると思い込みハンサムにあこがれる心理は、若いころなら誰でも身に覚えがあると思う。しかし、33歳にもなってまだそのコンプレックスを克服できていない主人公って、どうよ!? 現代人の精神年齢の低下を考慮するとしても、物語に説得力を感じないのは漫画チックな演出のせいで、鼻ほじりなどのベタなギャグや原色を配した色使い、必要性のない“LOVE”などのテロップや、演出過剰なバラエティー番組を見ているようで、気が付けば置いてきぼりを食らっていた。テレビ慣れした観客にはウケるのかもしれないが、だったらテレビでやれよ! と思ってしまう。発想は面白いし俳優陣は頑張っているんだけど、スクリーンで見るには、ちょっとツラい。

前田かおり

4点美醜を悩む女性が主人公の話はよくあるが、基本、男がブサイクだからと悩みひがむのはみっともないからか、あまりないような……。それを塚地武雅と谷原章介というわかりやすいキャラで演じるのだからアイデアとしては面白い。ひと昔前の二枚目、中条きよしの起用も笑える。でも、CM出身監督にありがちな派手派手しい映像で、紳士服メーカーや東京ガールズコレクションともコラボしたり、1980年から1990年代のヒット曲を使ったり、映画というよりまんまCMみたい。んー、映画館で観るほどか……。

今祥枝

6点塚地武雅&大島美幸のコンビがほのぼのとしてほほえましく、笑った後にホロリの王道。鈴木おさむのオリジナル脚本に谷原章介のハジけた演技、ネタバレ厳禁の温水洋一の起用、ビジュアル&音楽に至るまで、何もかもが狙い通りという感じ。あまりにも狙いにハマり過ぎていて、筆者にはちょっと気恥ずかしいものがあったけれど総じて楽しめた。もっとも、翌日にはすっかり記憶の彼方に飛んでしまっていたけれど。

このページのトップへ

レッドクリフ Part I


 (C) Bai Xiaoyan

M:I-2』などの巨匠、ジョン・ウー監督が100億円を投じて作り上げた歴史アクション大作。中国の英雄伝「三国志」を基に、国をかけて戦う男たちの壮大なロマンと、彼らを陰で支える女性たちの姿も浮き彫りにする。才気あふれる軍師を演じるのは『LOVERS』の金城武。彼とともに戦う知将役に『インファナル・アフェア』シリーズのトニー・レオンがあたる。2人の偉大な英雄ぶりに目を見張り、華麗で鮮やかなアクションに息をのむ。

[出演] トニー・レオン、金城武、中村獅童
[監督] ジョン・ウー

中山治美

7点冒頭、ご丁寧に「三国志」の説明を入れていただきありがとうございます。中国史に疎い筆者も入り組んだ人間関係を理解できてよ。ただ、ジョン・ウー監督が手掛ける華麗なアクションを期待していた筆者としては物足りない。何せ金城武、チャン・チェンのイケメン2人の見せ場がなく、後半、トニー・レオンがちょこっと。おぉっ! と前のめりになったのは趙雲役フー・ジュンのアクションのみ。Part IIまでの焦らし作戦ですかい!? だとしても145分は長いよ。

山縣みどり

4点赤壁の戦いの本質は美女争奪戦というジョン・ウー監督の解釈は面白いのだが、『LOVERS』や『HERO』を意識しまくりのエキゾチック・アジアな演出はいかがなものか? 彼のシグネチャーといえるスロモ映像もハト飛ばしも今回はおざなりで、不要感も強い。笑ったのが、なぜかタイマン張る勇者のシーン。スターの見せ場とキャラ説明のためなんだけど、壮大なはずの合戦がすごく小規模に感じられるの。思わず「小っちぇ~」とつぶやいたのでした。

相馬学

6点2部作の前編とはいえ、観る側としては『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのような、1作1作の完成度を求めたい。そんな視点で見たとき、果たしてどれほどの人が本作に満足できるのだろう? 男気あふれるジョン・ウー節が、効いてしかるべきの周瑜と孔明の友情は説得力にとぼしい上に、山場がどこにあるのかわからないままのブツ切り状態。合戦の迫力はあるものの、本来圧倒的に少数であるはずの劉備&孫権連合軍の方が、軍勢的に有利に見えてしまう点は気になった。関羽や張飛、趙雲といった「三国志」における“スター”にそれぞれヒロイックな見せ場があるのは『ロード・オブ・ザ・リング』風だが、後編を観ないことにはいろんな意味でスッキリしない。壮大な予告編を見せられた気分……。

前田かおり

6点まるで“たけし城”のような赤壁の、どでかいセットや迫力の馬上バトルシーンなどの撮影現場取材をしたので、熱く語りまくっていたジョン・ウー監督の「三国志」好きに改めて納得。歴史ものでもお約束の白いハトは飛ぶし、二丁拳銃ならぬ二刀流アクションも忘れてはいない。そして、男気ムンムンのドラマは緊迫感十分。とはいえ、トニー・レオンはいいけど、金城クンは扇をパタパタやっているだけで何か地味。一番、おいしいのは趙雲役のフー・ジュン。素顔も気持ちのいい男だった、好感度上がるな。

今祥枝

7点趙雲、関羽、張飛が素晴らしい立ち回りを見せる冒頭は傑作! と大興奮。彼らに比べると終盤のトニー・レオンは武将としては線が細過ぎるのが気になったが、金城武の孔明とともに悪くない。ラブパートで間延びした感があるのは、ジョン・ウー映画としてはご愛嬌(あいきょう)か。壮大なアクションは十二分に見せてくれたが、“赤壁の戦い”がどれほどのものだったとしても、前編以上の何かを後編に期待するのは難しい。3時間弱で1本にまとめても良かったような。

このページのトップへ

ブラインドネス


(C) 2008 Rhombus Media / O2 Filmes / Bee Vine Pictures

シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスが、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説を映画化した心理パニック・サスペンス。視界が真っ白になる伝染病がまん延する状況下で、人間の本性や社会の恐怖をあぶり出していく。出演は『ハンニバル』のジュリアン・ムーアをはじめ、日本からは伊勢谷友介木村佳乃が参加するなど、国際色豊かなキャストが実現。サスペンスフルな展開と深遠なテーマで見せる注目の衝撃作。

[出演] ジュリアン・ムーア、ガエル・ガルシア・ベルナル、木村佳乃
[監督] フェルナンド・メイレレス

中山治美

6点この手のパニック映画というのは、切羽詰まった人間たちが、どこまで己の本能をむき出しに、他人を蹴落としてでも生きてくぜ! を見せてくれるか。それが筆者の評価基準となる。筆者の最高点『28週後…』に比べると、まだまだぬるいね。ちょっとネタバレになるが、第3病棟のキング(ガエル最高!)に「メシが欲しけりゃ女出せ」と脅され、妻を差し出しているんだよ。非常事態とはいえ、その後の夫婦関係は変わると思うけど。オチも不満。

山縣みどり

4点映画を観るのが仕事なので、失明は他人事ではない恐怖。とはいえ、この映画の失明者の本能向きだしの行動にはまったく共感できず。失明し、隔離されたからといって文明人がいきなり野性に戻るかな?  ジュリアン・ムーア演じるヒロインは“モラル”の体現とは思うが、彼女が最後まで切れないのも納得いかず。彼女の最後のひと言も「はぁ?」って感じ。アルベール・カミュの「ペスト」とウィリアム・ゴールディングの「蝿の王」をほうふつさせるけど、人間の本質に迫り切れず。

相馬学

8点世界中の人々が盲目になってしまうという設定に、SF的な理由づけを期待してしまう気持ちはあるが、そういう目で見ると肩透かしを食らうだろう。本作の肝は、その理由を観客一人一人に考えさせることにある。地球温暖化のせいと見るもよし、盲目的な利益の追求が及ぼした影響と見るもよし。とにかく、“今”に何らかの危機感を抱かせる作品であることに疑いの余地はなく、観終わって後に引く。英語圏の俳優だけではない多国籍キャスティングにも、地球規模の何かを考えさせる意図が見え隠れして興味深い。ガエル・ガルシア・ベルナルが体現した、集団の中で権力を握り、暴走する心理の描写には恐ろしさを抱かずにいられない。観賞後の感じも、ホラー映画的でお気に入り。

前田かおり

5点『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』と圧倒的な映像の力で物語に引き込む監督だけに、今回も見入った。でも、隔離された世界で人間のエゴがむき出しに……というのは、最近なら「LOST」みたいなもん。映画化を危惧(きぐ)した原作者の不安通り、目が見えない人間たちがスーパーで争う姿はゾンビ映画っぽい。全部がどこかで観たようなデ・ジャブ映画。で、ジュリアン・ムーアは熟女ヌードをさらすが、日本から参加の木村佳乃は肝心なところで中途半端。やるならがっつり行ってくれ。

今祥枝

6点ラストまで観て「なるほど~」とうなるも、そこに至るまでがなかなかにつらい。阿鼻(あび)叫喚の地獄絵図が展開する収容所の描写は、新手のゾンビ映画かと見まごうおぞましさ。盲目になったらなったで「助け合って生きよう!」とはならず、狭い世界の中でやっぱりヒエラルキーが生じていく過程は醜く、目を背けたくなる。結局は人間が一番恐ろしいという真理。最近の恐怖映画には、そういうオチが多いよなぁ……などと思いつつ、これはホラーじゃないんだけどね。

このページのトップへ

筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美鴇田 崇相馬 学
高山 亜紀小林 真里山縣 みどり
ADVERTISEMENT
  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT