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『海賊とよばれた男』岡田准一インタビュー

自分自身に飽きたくない

『海賊とよばれた男』

最新主演作『海賊とよばれた男』岡田准一が演じるのは、激動の時代にエネルギー事業で一世一代のチャレンジをした実在の男をモデルにした国岡鐡造。60代をメインに、20代から90代までを一人で演じきるその演技に、凄まじい吸引力がある。「頑張ること、耐えることが人間の特権」と語る岡田が、本作でのトライについて語った。

■撮影現場ではずっと60代のままでした

『海賊とよばれた男』

Q:『永遠の0』に続いて、百田尚樹さんの小説を山崎貴監督が映画化する試みですね。

もともと原作は読んでいて、「鐡造の役は、自分ではない」と思っていました。まさか自分がこの役をいただけるとは思ってなくて、幅広い年代を演じられるかどうか悩みました。監督に「本当に僕ですか?」ということだけお聞きして。そしたら「そうだ」と。「共に闘ってほしい」と言ってくださった。VFXの世界でも毎回チャンレジをしていて、道を切り拓いていく監督なので、何か勝算があるんだろうなって思いました。僕としては、特殊メイクをして自分の歳より世代が上の人物をメインに据えた作品で、上手くいっているものは世界でも数本しかないという認識があるので、これはとんでもないチャレンジだと思いましたが、監督の「共に闘ってほしい」という言葉で覚悟を決めました。

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『海賊とよばれた男』

Q:60代を演じる岡田さんが、とにかく素晴らしかったです。どのようにして、あれだけ年長の役を、あそこまで自然な説得力で演じることができたのですか?

撮影現場では、ずっと役柄のままでいました。自分がやりやすい環境で、スタッフもやりやすい環境を作る。それが主演としての僕のやり方なんです。『永遠の0』のときは孤高の飛行士の役だったので、スタッフとほとんど話しませんでした。それがあの現場の空気になりました。その空気によって、あの人物が持っている異質なものが浮かび上がってきたと思います。今回は撮影現場に入って、いきなり「60代です」というようにはできないなと。周りとの関係性も考えると、急に切り替えはできない。それで、60代のメイクをしているときは、役柄のままでいました。たとえばプロデューサーの方に対して、「久しぶりやのう。お前は何をしてくれるんや?」と演じた国岡のノリでイジったり(笑)、アシスタントの方にも「元気か?」と声をかけるとか。メイクが終わった瞬間から、役柄のままでいることで、みんなが慣れて「ああ、こういう人を撮るんだ」となっていくといいなと思ったんです。山崎組はそれが許される現場。そうやったほうがいい空気が生まれると思ったんですよね。

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■武将の声の出し方に似ている!?

『海賊とよばれた男』

Q:声の出し方も圧巻でした。

声はどこから出すのか。それはずっと探していましたね。監督は「そのままでいいよ」とおっしゃっていたんですけど、自分の中ではやりきらないと観ている人が(役を前にして)ハマらない気がして。たとえば武将をやるとき、声のトーンや響かせ方はある程度決まっています。どのように声を通しつつ、野太さを出すか。そこに近いところがありました。

Q:石油事業で国家規模の大胆な挑戦を繰り広げた国岡鐡造。60代の彼と、30代の彼が交互に画面に登場します。変わらない精神性と、積み重なる蓄積と。核の部分と年輪の部分を、見事に演じ分けていますね。

基本的に、人ってそんなには変わらないと思うんです。ただ、歩いてきた年月によって顔つきや雰囲気が変わったり、与えられる責任によって、いろいろと変わってくるものだと思います。でも、一方で変わらない情の深さがあったりする……。始まる前はそういうことをすごく考えていたんですけど、現場では考えないようにしていました。化学反応を楽しむというのがベストだと思ったので、自然とそうなっていったというか。とくに、山崎組は見えないものが多い現場なので。「ここに船があります」と言われて、見えない船を前にセリフを言うこともありました(笑)。

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■経験を、あえて自信にはしない

『海賊とよばれた男』

Q:VFXの多い作品ですから、目の前にあるのは合成用のグリーンバックだけ、ということも多いわけですね。想像力がかなり試されます。

その空白の部分を楽しむというか。自分が役を演じる上でも、詰めて考えても、わからない部分はある。その空白の部分も楽しみながら作っていく。年齢を重ねるということ自体、経験してない空白の部分なわけですが、その空白もガチガチにならず、リラックスして作りたいと思いました。(人間像の)核にある熱や悲しみ、弱さ、情というところは、大事にしました。とくに情ですよね。目標を掲げられる、夢が持てるリーダー。現実的には難しいかもしれないけど、「これ、できたらスゴイよな?」と思わせてくれる情。それさえ核としてあれば、空白の部分を楽しむ余力を蓄えるために、現場では忘れるということを徹底していたと思います。

Q:岡田さんご自身はどのような高齢者になりたいですか。

『海賊とよばれた男』

ユーモアのある高齢者になりたいですね。いろいろなものが見えてきたり、理解することが、歳を重ねることだと思うんです。そのときに、物事に対してあまり偏った考えを持たず、すべてを見通した上でのユーモアがあり、あらゆることに対して飽きていない人になりたい。経験を重ねていくと「ここはこうだから!」とか、そうなりがちだと思うんですよ。経験を積み重ねることは、予測がつくようになるということなので。自分はどういうふうに芝居ができるのか? 僕も20年、この仕事をしてきて、突き詰めて考えれば考えるほど、自分に飽きたくないと思うんです。作品、監督など、たくさんの方と絡み合うことで、飽きずにやれている。飽きないで楽しむこと。人との間に何かが生まれるということを諦めたくないですね。経験というものは尊いものだと思うんです。でも、経験値が壊れたときの方が面白かったりもする。経験は端から見てスゴイこと。でも、それを大事にしない。「自分の経験では……」とは言わないようにしたいです(笑)。

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■取材後記

時代劇出演も多い彼は、侍の精神を大事にしているという。「時代劇では、相手を敬うこと、相手の存在を認めることが、作法につながる」と語る。共演するキャストはもちろん、共に作品を作り上げるスタッフという「仲間」への敬意が、彼独自の現場作りにつながっている。そうした侍の精神の先に、「空白」を楽しむことも、経験を自信にしないひたむきさも存在しているのだと思わされた。(取材・文:相田冬二)

映画『海賊とよばれた男』は12月10日より全国公開

(C) 2016「海賊とよばれた男」製作委員会 (C) 百田尚樹/講談社

映画『海賊とよばれた男』オフィシャルサイトはこちら

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